名言・正論にも批判殺到!為末大
発言するアスリートとして著名な為末大。
今回発表したブログ
歴史とリーダーシップ
のなかで、
私の引退後の人生はほぼ現役時代の名声によって支えられているけれど、その名声はTBSが日本で世界陸上をブランディングし広めていったことによって高められている。つまり世界◯◯などの他のスポーツのメダリストはここまでちやほやしてもらえない。自分の力で銅メダルを獲得したのは確かだけれど、その銅メダルを日本国内で権威付けたのは一放送局と広告代理店なのだろうと思う。
為末大ブログより
為末大は、2001年、2005年の世界陸上選手権において3位、つまり銅メダルを獲得しています。
この
世界選手権銅メダリスト
を世界陸上を放映したTBSと広告代理店が、権威付けたおかげで、今の自分の地位があると述べています。
ここまではっきり言ってしまう勇気には感心するとともに、本人が語っているように、非常に謙虚にモノゴトを捉える習慣が備わっている人であると言えます。
そんなものを言う為末大ですが、これまでtwitterの発言が波紋を呼ぶことが数々ありました。
今回は、為末大とは、どういう成長過程を踏んできたのか?
そこから陸上競技に関して、問題提起する為末大を追います。
世界選手権2度銅メダル為末大の記録の凄さとは?
はじめに、為末大というアスリートがどれだけ凄いかを記録で紹介したい。
種目 | 記録 | 所属 | 期日 | 大会名 | 場所 | 記録の種類 |
---|---|---|---|---|---|---|
400mH | 47.89 | 法政大 | 2001/08/10 | 世界選手権 | エドモントン | 日本記録 |
400mH | 49.09 | 広島皆実高 | 1996/10/14 | 国体 | 広島広域 | Jr日本記録 |
400mH | 49.09 | 広島皆実高 | 1996/10/14 | 国体 | 広島広域 | 高校日本記録 |
400m | 45.94 | 広島皆実高 | 1996/10/16 | 国体 | 広島広域 | 日本歴代26位 |
400m | 45.94 | 広島皆実高 | 1996/10/16 | 国体 | 広島広域 | 高校歴代3位 |
200m | 21.36 | 五日市中 | 1993/10/31 | 不明 | 不明 | 中学歴代2位 |
本職の400mハードルの日本記録保持者であり、ジュニア、高校日本記録保持者です。
いずれも10年以上、記録が更新されていないことからも、その記録がいかに凄いかご理解いただけるでしょう。
余談ですが、ジュニア記録を出した当時、ほとんど素人状態で出した記録が49秒09。
とんでもない素質の塊と言えます。
本人も述べておりますが、1993年全日本中学校選手権で100m,200m優勝。
1994年国体少年B100m,400m優勝と同年代を圧倒する選手でした。
ところが、ハムストリングスのケガなどもあり、圧倒的だった速さに陰りが出始めました。
そのときに記録集を見て、為末大は気づきました。
早生の選手は大成していないという事実に。
これは日本のみならず世界的に見ても同様の傾向にあります。
ジュニア時代に記録の高かった選手が、シニアの世界記録を出すことはマレである。
近年、ボルトが200mのジュニア世界記録、シニアの世界記録を出した例はあるものの
多くの場合は、年齢を経るごとに失速しています。
これは成長曲線が異なり、早めに成長するため、同世代よりも記録が出ているということのようです。
まず、為末大が凄いのは、そのことに広島皆実高校時代に気づいたということです。
当然、指導者や周囲のアドバイスはあったでしょうが、ふつう気づきません。
ふつうの選手であれば、せいぜい自分の記録とライバルの記録ぐらいしか比較しないところを過去の記録から、現状の自分そして今後の自分を見いだしたことでしょう。
陸上競技の記録集から拾えば、為末大同様に記録をバンバン残している選手を発見することは容易です。
ところが、そのなかで世界と対峙し、3位を勝ち得たというのは、走る競技においては為末大と末續慎吾だけという現実がそこにあります。
(リレー競技は除く)
毎度、オリンピック、世界選手権の短距離系種目の決勝をみれば、ネグロイド系ばかり。
そういった厳しいなかでの3位ですから、冷静に判断すれば、素晴らしい記録と言えます。
陸上競技の花“短距離”はお金にならず
小学校の運動会での花形と言えば、
徒競走、リレー
ですよね。
駈けっこが速い
というのは、それだけでヒーローになれる要素ですよね。
為末大もそうだったようです。
自分の身近でも、のちに陸上競技棒高跳びで日本記録を打ち立てた先輩がおりました。
その方も、運動会のリレーで異常に速かった。
という記憶が残っています。
もう何十年も前のことなのに、記憶に残ると言うことは、それだけ駆けっこの速さというのは、子どもの頃の人間関係に与える影響が大きいものです。
そんなヒーローたちの中から、選りすぐられた人の一人が、為末大と言えます。
ところが、これが大学、社会人となると大きく変化します。
日本の場合、駅伝、マラソンが人気種目のため、スポットライトを浴びる機会は、長距離選手の方が多くなります。
その代表的な例が、箱根駅伝ですね。
お正月2,3日とお茶の間を独占する一大コンテンツからは、“山の神”と称されるヒーローが出現し、大いに盛り上がります。
10区間という長丁場のため、どの大学も選手を集めることから始めなければなりません。
そうなると高校ランキングが上位でなくても、100位以内に入っていれば、いずれかの大学に推薦では入れるという現実があります。
ところが、短距離はそうはいきません。
高校総体、国体などで上位に来ていないと、推薦での強豪大学入学は厳しいです。
そして、もっと厳しいのが、就職。
ニューイヤー駅伝という元旦に行われる一大イベントがあるため、実業団チームは、相応に長距離選手を抱えています。
また、陸上競技部と言いつつも長距離専門の陸上競技部も多いのが現実です。
高校卒業で入社する選手もおりますが、
多くは箱根駅伝の経験者が、採用されるケースが多く見受けられます。
ところが、
短距離選手は、インカレチャンピオンであっても、オリンピック、世界選手権に出られる可能性があるくらいの選手でないと、選手として企業に採用されることはまれです。
種目によっては、大半が仕事を持ちながら、土日だけ競技に専念する選手が、日本のトップレベルということも多々あります。
(マラソンの川内優輝をイメージしてもらうと分かりやすいかと思います。)
これはひとえに
広告塔としてテレビに映る時間
この点に尽きると言えます。
マラソンであれば2時間あまり、自社のユニフォームを着た選手がテレビに映ることは、宣伝効果として多大なものがあります。
100mなどは、ウォーミングアップ姿などを放映しますが、10秒程度、リプレイを入れても20秒。圧倒的に時間という壁がつきまといます。
じっさい、マラソンのテレビ放送が始まった頃、5kmまで先頭を走ったらボーナスを支払うという企業もあったくらいに、宣伝効果として長距離は重宝されていることが、綿々と続いています。
また、ご存じの方も多いかもしれませんが、
箱根駅伝は、関東学生陸上競技連盟が主催しております。
その関係で、為末大も、法政大学時代には、裏方として手伝うなどしています。
法政大学の同僚である長距離ブロックには、頑張って欲しいというものの、正月から裏方かよという気持ちは、少なからずあるはずです。
そんな経緯もあってか、Twitterで下記のように発言しています。
日本の長距離と世界の差が開けば開くほど、駅伝に海外の選手を入れると興ざめするぐらい差がついてしまい、競争を盛り上げるために鎖国せざるを得なくなる。それでも駅伝の人気が続くことに賭けるというのならわかるけれど、あまり成功すると思えない。
— 為末 大 (@daijapan) 2015, 3月 2
世界レベルでないと、陸上競技を続ける環境がない短距離種目に対し、鎖国政策で盛り上がるほかない長距離という現状を憂う発言です。
たしかに、昨年の男子マラソンの上位の記録をみると、ケニアとタンザニアの二大マラソン大国の選手の記録ばかり。
長距離種目も、短距離種目同様に、ネグロイド全盛で、かつてのマラソンニッポンは遙か彼方というのが実状なのですが、
箱根駅伝という一大コンテンツによって、
選手育成が疎かになっているのではないかという至極まっとうな意見です。
じっさい山の神と称された一人柏原竜二は、社会人になってから、ぱっとした結果を残せずにいます。
とくに長距離種目は、怨念に近い執念が必要な競技特性があるため、周囲にちやほやされ、舞い上がってしまうとダメでしょう。
厳しくつねに自分を追い込まないと、ラストスパートまたは最終局面で勝ちきれないという競技特性があります。
ところが、ヒーローとなることで、自分の立ち位置が見えなくなることや、追い込めなくなっている現状があります。
そのことを自分の経験から為末大は述べていると言えます。
繰り返しになり申し訳ないのですが、柏原竜二にしても、東洋大学時代、勝負強かったことは事実ですが、
10000mの柏原竜二の自己記録は28分20秒99
10000mの世界記録は26分17秒53
長距離種目は、気温など外部環境の影響が大きいため、一概に比較はできませんが、周回遅れになるほどの差が、山の神と世界のトップにはあるという現実を知るからこそ、為末大は、箱根駅伝の問題を提議したと言えます。
前述しましたが、為末大が自分自身を知るキッカケとなった陸上競技の記録集を見て、よくよく研究しているから分かることとも言えます。
まとめ
為末大に、やっかみがないとは言い切れませんが、長距離ランナーが、内部的な盛り上がりによって、選手がスポイルされる現状を危惧。
違う道を模索すべきと提議している点は評価すべきでしょう。
今年の箱根駅伝で初優勝した青山学院大学にしても、宣伝したい!
ここぞとばかりに監督がテレビ出演、本を出版と大活躍されています・・・・
気持ちは分からなくもないのですが、
優勝の先に何があるのか?
そこが見えていないから、為末大は指摘するのだと言えます。
為末大は、世界の強豪たちと戦うだけでなく、
こういった陸上競技界ないとも戦いつつ、現役を全うしたとも言えます。
為末本人は、放送局と広告代理店のおかげと言うものの、
為末大
としての明確な戦略を保ち、技術を向上させた結果があるからこそ言い切れることなのでしょう。
正直、自分もその高みに行ったことがありませんから、間違っているかもしれません。
しかし、為末大が勝ち上がった構図、彼のこれまでの発言から、今回は自分なりに為末大の批判が殺到すれど、正論である裏付けをご紹介しました。
最後までお読みいただきましてありがとうございます。